ななかさんの印税生活入門
女子中学生がラノベを書いて印税生活をしようとするマンガ。
これを読めば印税生活ができるようになる指南書ということは一切無く、むしろラノベあるあるをコミカルに風刺する作品。
例えば、ラノベにありがちな長文タイトルをネタにして
ななか「タイトル思いつきました!俺の妹が異世界でもギリギリ確定申告な件!!」
ミキ「どんな本だ」
とか、異世界転生ものをネタにして
ななか「こちらの世界でそんなに注目されない特技が異世界では重宝されるというのもいいですね。たとえば中央線の駅名全部言えるとか」
ミキ「どう役立つんだそれ」
ななか「なんと異世界で失われた超高位魔法の呪文と一致したんです!!」
ミキ「偶然すぎる」
というような感じ。
こういうシュールかつシニカルでじわじわくる笑いはすごく好き。
ラノベネタ以外でもななかの独特のセンスは光っている。
特に好きなシーンは、第六話の最後。
ななか、ミキ、まいの三人に創作の場所(たまり場)として美術室を貸してくれる永山先生。
私たちいてもいいんですか?というミキに対して、先生は過去の話を打ち明ける。
曰く、先生は学生時代、学校が苦手で、オアシスみたいなのに憧れて保健室に入り浸っていたという。
それで、教師になって恩返しにそいういう場所を作りたかったというのだ。
その話に対してななかさんが一言。
ななか「なるほど。深海における鯨骨生物群集みたいな感じですか」
永山先生「私は鯨の死体か!!」
ななか「いい意味です!いい意味で死体です!!」
ここで鯨骨生物群集という単語を入れてくるセンスがすごい。
というか鯨骨生物群集という単語はここで知った。
ふつうのマンガならこんな単語がいきなり入ると「え?」と止まってしまうが、ななかさんの感性にしばらく浸っていると独特の心地よさが出てくる。
爆笑必至、という訳ではないが、じわじわとななかさんワールドに引きこまれていく一冊。
さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ
タイトルが衝撃的すぎる。
以前どこかで表紙だけを見たことがあり、それ以来ずっとタイトルが頭から離れなかった。
実際に読むまでは、レズ風俗に行った経験をおもしろおかしく描いたりしているのだろうと思っていたがそんなことはなかった。
物語は作者がレズ風俗に行く10年前から始まる。
高校を卒業した後、うつ状態になり、職業を転々とする毎日。
マンガ家になって、新しい自分を見つけたかと思うがそれも長くは続かずまた元の精神状態に逆戻り。
辛さの理由を知りたいと思った作者は文献を漁り、自分の内面を考察し始める。
そして「自分自信」の欲求ではなく「親のごきげんをとりたい自分」の欲求で行動していたことに気づく。
本当の自分の欲求を知りたいと思った作者は、子供でありつづけるために自分は性的なことから目をそむけ続け続けてきたことに思い当たる。
こうして作者はレズ風俗に行く決心を固めるのである。
「何があっても自分を認めてくれる居場所が欲しい」とか「自分で自分を大切にできていない」という言葉にはギクリときてしまう。
こういう悩みはなかなか他人に相談しづらいし、まして不特定多数の人間に晒すなんてできない。
それをこのマンガは余すことなく赤裸々に語ってくれる。
「生きるために」とか「本当の自分は何か」とかそんな大きなことだけではない。
「自分にはハゲがあるから恥ずかしくてレズ風俗に行けない」とかそんな些細な(ハゲは些細ではない!)悩みまでありとあらゆる心の弱さを語ってくれる。
同じような悩みを持った人がいると分かるだけでこんなにも安心できるのかと実感する。
それに、このマンガには事後談もある。
このレポをインターネット上に投稿し、多くの反響を集めた作者。
自分の本当に描きたいものを描く喜び。そして多くの人にそれを届けられる喜び。
生きる喜び「甘い蜜」を見つけ出す。
鬱状態から立ち上がり、甘い蜜を探し出すまでの10年を赤裸々に語ったこの本は、間違いなく大きな勇気を与えてくれ、読んだ人の価値観を変えてくれると思う。
白衣さんとロボ
まずなんといっても注目したいのが表紙。
畳にちゃぶ台にブラウン管テレビとなんとも昭和レトロな雰囲気のなかでロボが鍋を運んでいる。
なんとも突飛な組み合わだがなぜかうまく調和している。
また、全体として雑然とした感じだが、細部まで丁寧に描かれているので見ていて全く飽きない。
この表紙に一目惚れして思わず買ってしまった。
肝心の中身について。
タイトルや表紙の通り、いつも白衣を着ている天才女学生「白衣さん」と、白衣さんが作ったロボット「ロボ」の日常を描いた四コママンガ。
このロボ、見た目だけでなく中身もなかなか味のあるロボットで、麦わら帽を被って畑仕事をしたり割烹着を着て料理を振る舞ったりして白衣さんに使えている。
さながら昭和のおばあちゃんである。
一方、白衣さんの方はというとズボラで冷淡な性格。
一日中コタツに篭っていたり、寝坊してロボに起こしてもらったりしている。
また、生活費を切り詰めなければならなくなったとき、ロボが「光熱費を削る努力をします」と言ったのに対し白衣さんは「じゃあ私はロボの交換部品代を削って節約するわ」と返答。
このようにロボの必死の奉仕を白衣さんが受け流して一本取るというのが定番の流れになっている。
大体ロボが不憫な感じで落ちるのだが、ロボの人間味あふれるいじらしい反応がなんとも面白く、また愛おしくもある。
もちろん白衣さんとてロボが嫌いなわけではなく、ロボが風邪を引いたら(!?)看病するし、布団が冷たいと言って添い寝をしたりもする。
一見ロボを粗雑に扱っているように見えながら、実は大きな愛に溢れているというのがこの本の大きな魅力の一つだ。